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2007年03月04日
調査日誌より(№4)
滝のある沢
今年はリュウキュウヤマガメの調査地の側溝でマーキングをした個体が、山中のどのあたりまで行っているのかという課題を持ち、冬期中に農道・林道沿いの山中の地形を下見している。これまで、糸巻きをつけて追った場所は省き、一度も踏み入れたことのない場所を中心に行っている中で、1本の枯れ沢がある。この枯れ沢はみかん畑に隣接し、その持ち主が幼少の頃よく遊んだ沢で、上流には水量は少ないが常時水があり、そこには滝もあり、ヤマガメも多く見ているということで、一度は入ってみたい沢であった。
道路から沢沿いに入る古いみかん畑の中、既にみかん木は枯れており触ると簡単に折れる。その先は雑木に茨が巻き付き、行く手を阻む。鎌で茨や雑木の枝をはらい前進。途中ゲットウの大きな株があり、過去に人の手が入ったことがうかがわれる。このゲットウは筆者の背丈の倍もあり、根元から数本切り倒す。何かが倒れるゲットウからジャンプする。オキナワアオガエルだ。よく夏場に暑さをしのぎ、このゲットウの密生した葉陰で見るカエルのひとつである。この先は山側が崩れ、沢に下りるしかない。沢に下りるが水は全くない。大雨時しか流れているのを見たこともない。比較的小さな石が川底を覆い、歩き易い。枯れ沢を邪魔な木々の枝をはらい進む。道路から約100mで山裾にかかり、そこまで来ると水量は少ないが水が流れ、その水は石の下に吸い込まれるように消えている。沢もやや傾斜が付き、登りになり沢底の石も大きくなる。沢幅もところどころ狭くなり、左側は切り立った古琉球石灰岩の岩肌がむき出しになり、木々はその岩盤にしがみつくように根を伸ばしている。根が耐え切れなかったのだろう倒木も多く、行く手を阻むように沢に倒れ掛かっている。その倒木を崩したり乗り越えたりしながら、沢を登る。沢の小さなよどみを覗くが、期待したオタマジャクシが1匹もいないのに気がつく。おかしい条件が揃っているのに何故オタマジャクシがいない。水面にミズスマシがいるだけに見える。目を凝らしてよく見ると時々水底に何か動く。ハゼだ。種までは分からないが気をつけてみると意外に多い。大雨の時に登ってきて、そのまま取り残されたのだろう。オタマジャクシがいないのはこのハゼがカエルの卵を食べてしまうのであろう。ガッカリである。
沢の傾斜もきつくなり、ここだけは日が余り届かないのだろう。シダ類が多く、倒木や周囲の岩盤に大小のシマオオタニワタリがみられ、他の沢と違った雰囲気で、ここにハブでもいれば絵になるだろうと思いつつ登る。行く手には岩盤の壁が見える。滝だ。思ったほど水量は多くない。滝つぼも小さく、乾期に夏でも枯れないと聞いたが本当だろうか?滝の高さは約5m滝沿いに無理をすれば登れないこともないようだが、ハブがいれば身のかわしようもないのも確か。迂回し、滝の上に出たほうがよいだろう。少し戻れば迂回も出来そうだ。滝で休みながら手を見ると、あちこち腫れている。ブヨだ。ブヨに弱い筆者で長居は出来ない。ヤマガメがここに来るにはまだ早く、それまでに後幾度か来る必要はあるが、今日はここまでとし早々に滝を後に引き返すこととする。