2006年05月27日
調査日誌より(2006年№2)
<<ノグチゲラの営巣を発見>>
<<ノグチゲラの営巣を発見>>
私の調査地で恐れていた5月の連休も無事に終わり、ホッとしている。その連休のさなか、素晴らしい光景に出くわした。
連休の2・3日に子供達とその父兄を連れ、森林公園での自然観察会を行った。総勢で25名の観察会であるが、無事に何事も無く終了。筆者はその観察会と平行し、ヤマガメの調査を行うため、原付で単独ヤンバル行きにした。3日に子供達や父兄と別れ、調査地へ原付を走らせる。やはり連休のため、行きかう車は普段より多い。原付を降り歩きで側溝を除きながらの移動。道路脇の草刈後のため、側溝内の落ち葉が少ない。これではヤマガメは餌を求めて出てこない。見かけるのはキノボリトカゲやアオカナヘビ。穴にはアカマタやアオヘビがみられ、道路わきの落ち葉をつつくとヘリグロヒメトカゲが落ち葉の中から飛び出してくる。
調査地の途中に川があり、休憩と水生昆虫を観察のため脇道に入り、水場へ下りる。先ほどからノグチゲラの声が聞こえており、ちょうど営巣時期でもあることから、「頑張ってるな」と思いつつ、川の水面に目を凝らす。その時、意外と近くでノグチゲラの声。近いと思い顔を上げ、声のする方へ目をやると直ぐに確認できた。その場で動かずノグチゲラを観察。するとどんどん近づいてくる。いつもと違うと感じつつ見ていると、筆者から10mほどしか離れていない木に止まる。と同時にピィー、ピィーと雛の声。こんな近くに巣が、親は筆者が気になるのか直ぐには近づかず、口に何かの幼虫らしきものを銜えている。この時期は蛾の繁殖時期でもあり、大きなシャクガの幼虫が多くいる。
親は筆者が動かず安心したのか、巣穴に入る。その間雛は鳴き続けている。親は直ぐに出てきて飛び立つ。巣の位置は私から川を隔てた反対側のセンダンの木。水面からは5mほどの高さである。こんな丸見えの場所で、こんなに低い位置に営巣する例は筆者にとっては初めてである。最初に頭によぎったのは、こんなに低い位置で丸見えの巣で、果たして育つのだろうか?ということで、昨年だっただろうかハシブトガラスに巣を襲われ、雛が犠牲になった記憶が新しい。また、アカマタに襲われた例も知っている。この調査地は以外と蛇類も多く、近年はハシブトガラスも増え、リュウキュウヤマガメが今までにない死に方が見られ、他の場所ではヤマガメの成体を襲うハシブトガラスも確認していることで、筆者はハシブトガラスに捕食されたものと見ている。ましてや今は連休中、この場所では連休や夏休みにキャンプをしているのも見ている。騒がれれば終わりである。マスコミや鳥の愛好家に知られたらと思うとゾッとする。喋るわけには行かない。しかし、きちんとした(?)研究者には知らせるべきであろう。誰がよいのか?発見者として、記録をとっておきたい。そういう考えを頭の中で駆け巡らせ、調査用のカメラで写真を撮りながら観察を続ける。
雛の声からして複数で少なくとも2羽はいる。親は15~20分間隔で餌を運んでくる。写真を撮りながら一時間ほど観察したがそう長居も出来ず、連休中に荒らされでもしたらどうしようかと心配ではあるが、その場を離れることにした。
<<ノグチゲラの営巣・続編>>
調査を終え、帰ってからも気になってならない。部落の近くでもあり、区長に知らせ何か対策でもと考えたが、話が大きくなり、マスコミやマニヤに知られては終わりである。研究者にだけはと思い、一人の研究者には知らせた。また、映像の記録として残すべきと考え、沖縄市の博物館の学芸員と筆者のヤマガメ調査日に合わせてビデオを撮ることとした。一週間後、博物館の学芸員と共に、営巣場所が連休中に荒らされていないことを祈りつつ、その場に向かう。
ヤマガメの調査をしていても、気になって使用がない。調査途中で営巣場所による。周囲の草は荒らされておらず、親も雛も元気であることを確認しホッとする。雛は以外に成長が早いのか、既に親と大きさが変わらない。2羽(後日映像から、2羽であることを確認した)とも、頭に赤い帽子をかぶった姿が可愛い。筆者達になれないのか雛は巣から顔を出すが直ぐに隠れる。学芸員が自然な姿を撮るためビデオを仕掛け、早々にその場を立ち去ることにした。近くでは親の鳴き声も聞かれることで安心して離れられる。
約1時間半後にビデオのテープを交換のため、再び訪れる。交換時に一部の映像を確認するとしっかりと親子が撮影されており、場所を替え再びその場を離れて調査に戻る。
調査を終了し、再び現場に戻るがまだ少しテープ終了の時間があり待機していると地元の軽トラックが営巣現場へ入るのを確認し、慌てて現場へ駆けつける。騒ぎたくないので学芸員だけ行かせる。地元の人間は全く気付かなかったことを知りホッとし、撮影もそこで終了した。総撮影時間は約3時間でどんな映像が撮影されているか楽しみである。
その日から4日後、連絡した研究者から1羽が巣立ちをしたという連絡が入った。次の週に筆者が確認したところ、巣は空で近くに親や巣立ちの雛の姿も確認できず、巣の周囲も荒らされた形跡も無く、2羽の雛は無事巣立ちしたものと信じている。この場所は後からよく考えると以前に調査地を案内した人に「あれがノグチゲラの営巣巣」と紹介していることを思い出し、毎年同じ個体かは分からないが営巣しているようであることから、来年は最初からノグチゲラの営巣を撮影できるかもしれず、博物館と計画を立てようと考えている。
博物館から映像のDVDをいただき、まだ全ては見ていないが、何度も見返し赤帽子の特徴や顔の模様から雛は2羽であることを確認した。雛は多少成長の差があり、成長の早い方は撮影の時点で巣穴の入口に足をかけ、今にも巣立ちするかのようにも見えた。親から餌をもらうのも積極的なことで、成長に差が出たのであろう。また、ハシブトガラスが接近し、その声が大きく録音されている間、雛は姿どころか声も出さず、かなり恐れているようである。さらに、巣の前に小さくはあるがケムシが糸を伸ばしぶら下がっているのを雛は見ているが食べようとしない映像もあり、親からの餌以外は食べないようである。
今回のノグチゲラの営巣は人里近く、また営巣穴が低い位置であることから、自然界での営巣木が少ないのか、筆者の感じとして確かに一時期よりはノグチゲラの姿を見る機会は増えたようにも思える。しかし、それは数が増えたのではなく山中の営巣木が減ったことにより、止む終えず人里近くに営巣しているのかもしれない。専門の異なる筆者にはよく分からないが、今後もこの営巣木を見守っていきたい。
投稿者 seltage : 16:13 | コメント (0)
2006年05月01日
調査日誌より(2006年№1)
<沖縄は新緑の季節>
4月1日調査の日程を変え、土曜日のヤンバル行き。ヤンバルの山は新緑が8分ほどで、新緑の濃い香りが漂っている。林道を原付で走り抜けるのも気持ちがよい季節。沖縄春の産物であるリュウキュウイチゴが道路脇に実をつけつつあり、今年の初物を口に入れると甘酸っぱい味が口内に広がる。
道路脇の穴には太さ約5cmのアカマタが穴いっぱいにとぐろを巻くというより、折りたたみ押し込んだようにも見える。そろそろ本格的に活動が始まるようで、今年最初の脱皮のため、近くの別々の穴にいる3匹とも体が白濁している。どれか1匹でも採集しようかとも思ったが折角穴の入口で気持ちよさそうに日光浴をしている姿を見るとかわいそうになり止める。異なる場所の道路脇の日陰の穴には昨年繁殖したと思われるイシカワガエルが日中であるにもかかわらず、穴に入口で外をじっと眺めている。近寄ると慌てて後ずさりをするが、また出てくる。このイシカワガエル同じ穴に既に2ヶ月間留まっている。この場所は毎年であるが穴位置は異なるがこのような個体を必ず見かけ、皆同じように日中穴の入口で外を飽きもせず眺めており。人や車が通るたび少し引っ込みまた出てくる。これを日中繰り返しており、日陰での日光浴と思われるが、何のための行動か未だに分からない。今までに長い個体は同穴に約3ヶ月以上いた。晩は見られないことから、餌を求めて穴を出ていることは間違いなく、夜明け前には同穴戻ってくるようである。穴から顔を出している可愛い写真は撮影してあるが、アカマタも同様に写真を載せると場所の見当がつくので写真の掲載はやめる。
<一晩にヒメハブの交尾2例観察>
その日の晩、ハロゥウェルアマガエルの群れの大合唱の中にひと時身をおき、その声を体に染み込ませ、毎回ヒメハブが出没する場所へ向かう。ヒメハブは冬に少なくなる爬虫類で唯一数が見られるヘビである。カエル類の繁殖場所には付き物のヘビで皆丸々と太っている。途中の道路上にも数個体を発見、繁殖期真っ只中のオキナワアオガエルを狙っている。道路上で交通事故にあわぬように足で突き移動させるが、体を平らにし怒る。数回靴に噛み付くがかなわぬと見るとサイドワインダーと同じS字型歩行でジャンプするように道路脇に逃げる。
道路脇の高さ1.5m程のコンクリート塀の上、懐中電灯で照らすといるいる、3個体がきちんと何時でも飛びかかれるように体をS字型に構え並んでいる。毎回同じ個体が同じ位置にいる。程よく餌が捕食できるのであろう、リュウキュウカジカガエルのいる場所で、そのカエルを食べるのに丁度よいサイズ(50cm前後)のヒメハブが集まっている。今日は筆者の足元に新参者もいる。手前のヒメハブはまさに今食事中、カジカガエルの足だけが口から出ている。ライトを向けても知らん顔でカエルを巧みに口の中へ送り込んでいる。塀の奥ではカジカガエルがよく鳴いており、そちらに向かう。そこには6個体のヒメハブが見られ、水際に放置してあるベニヤを照らすと、その上で雌雄が交尾中。雄は尾を雌の尾に巻き付け体はⅤ字型に離している。その場に腰を落とし覗き込む。雌雄は明かりが嫌なのか動き始めたため、邪魔しては悪いのでその場を離れる。自然化での交尾はそう見られるものではなく、よいものを見たと気を良くし次の場所へ移動。
今度は山裾のバショウ畑に隣接する小さな田んぼ。ここはガラスヒバァとヒメハブの大物をよく見かける。懐中電灯を照らし散策開始。足元から多くのカジカやヌマガエルが飛び跳ねるなかヒメハブが2匹灯下に入る。2匹はV字型に、またしても交尾中である。何と運のよいことか、自然下で一晩に2組の交尾が見られたのは始めてである。この日は小雨上がりで気温は約18℃。ただ、直ぐに雌雄は動き始め交尾直後だったのか交尾姿勢をとく、写真を撮る暇も無く「邪魔してすまん」とその場を離れる。その直後ガラスヒバァの最大サイズが足元に、ここではヒメハブが6個体、ガラスヒバァ1個体を観察でき、気を良くしてその場を引き上げた。